コーポレートガバナンスについて
毎年恒例のシューワ「3大ドM企画」の最大の関門のひとつ、琵琶湖一周・通称「ビワイチ」を9月5、6日に予定していました。
約200kmを自転車(マウンテンバイク)で走り切る。
まさに!制限時間付きのドM企画です(笑)。
日常生活の仕事とは全く違う環境の中で、仲間と励まし合いながら自分の限界に挑戦をしてゴールを目指す企画です。
私はこうした企画について、誰もが同じ環境で苦楽を共にしてやり遂げる達成感こそが、人を成長させる大切な機会だと思っています。
しかし今回は、台風の影響と長引く秋雨前線による大雨警報を考慮して「中止」という判断をしました。
楽しみにしていたメンバーも多くとても残念でした。
本社の総務の各位には、宿泊や食事の手配からキャンセルまでありバタバタとさせてしまいました。
そして、私自身も「何とか開催できないか」という思いもありましたが、最後の判断はやはり、従業員の「安全第一」で判断しました。
昔のシューワだったら、「これぐらい大丈夫だ!」「行けるところまで行こう!」「最後は気合いと根性や!」と言っていました。(笑)。
父親の会長からのベンチャースピリッツとしての教えや私自身「まず行動」「やりながら考える」という実践力がシューワの伝統です。
今までは、そのスピード感や突破力が、これまでシューワを成長させてきた部分も間違いなくあります。
しかし、業歴が長くなり会社が成長して、従業員とそのご家族、お客様、取引先、金融機関、地域社会などのお付き合いの幅が創業当時とは段違いに広がりました。
やはり、その中でも五方よしの精神で、多くの方々に支えていただく企業になればなるほど、「社長の勢いだけ」で判断してはいけないと強く感じるようになりました。
勇気を持って未知の世界に進むことも経営ですが、リスクを冷静に見極めて、時には今まで進めてきたことでも勇気を持って「止める」ことも経営者の大切な責任だと思います。
今回のビワイチ中止は、今までのシューワGにとっては小さな出来事かもしれませんが、
しかしながらこうした「何かが起こる前に止める」という判断そのものが、これからの企業の成長発展には必要になってくると思います。
まさに!「BCP(事業継続計画)」につながる「考え方」だと思います。
災害が起きてから考えるのでは遅い!事故が起きてから安全を考えるのでは遅い!!そして不祥事が発生してから慌ててルールを作るのでは、もっともっと遅いのです。
「もし何かが起きたらどうするのか?」「従業員とお客様の命を本当に守れるのか?」
「最悪の状況でも会社を継続できるのか?」今後はこの観点を平時からど真剣に考え、仕組みにしておくことがBCPです。
そして、この「考え方」と非常によく似ているのが、今回のテーマである、「コーポレートガバナンス」ではないでしょうか。
先日、私は報道で、ニデック(旧日本電産)を巡って約278億円もの損害賠償を求める株主代表訴訟が起こされたことを知りました。
「278億円」という報道を知って、「278億円…?」このとてつもない金額を見た時、正直驚きました。
ニデックは、日本を代表するモーターメーカーです。
4畳半のガレージから、仲間4人でスタートをし、53年で2兆円企業へと成長させた創業者です。
その永守重信氏の強烈なリーダーシップと誰にも負けない努力によって、世界的企業へと成長しました。
稲盛塾長と同じ関西の京都企業で、一代でこれほどの企業を築き上げた経営力、執念、スピード感には、同じ経営者として学ぶべきところが数多くあります。
私自身も永守氏の「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」、そして「正月以外は休まない!」という徹底した経営姿勢から、多くを学ばせていただきました。
だからこそ、今回の問題は他人事ではありません。
ニデックでは、不適切な会計処理を巡る問題が表面化し、第三者委員会による調査が行われました。
その中では、会計処理だけではなく、組織風土やガバナンスのあり方についても検証されています。
そして一連の問題を巡り、株主側が旧経営陣らの責任を問う形で、約278億円という巨額の損害賠償を求める株主代表訴訟へと発展したことが報道されています。
同時に、これは単にニデック社だけの問題として見るのではなく、経営者である私自身が「自分の会社では本当に大丈夫なのか」と、
自分に矢印を向けて考えなければならない問題だと感じました。
むしろ、強いリーダーシップと圧倒的なスピードで会社を成長させようとしている経営者ほど、この問題から学ばなければならないと思いました。
ここで私が考えたのは、「会社にとって一番大きな損失とは何なのか?」ということです。
278億円という金額はもちろん大きい。
しかし、それ以上に怖いのは、創業以来何十年という時間をかけ、
従業員一人ひとりが積み上げてきた「信用」という見えない資産が、一つの問題によって大きく揺らいでしまうことです。
一つの判断、一つの数字、一つの「これぐらいなら大丈夫だろう」。
その小さな積み重ねが、やがて株主、従業員、取引先、お客様まで巻き込み、最後には何百億円という経営リスクに発展する可能性がある。
私は改めて、「ガバナンスとは単なるルールの問題ではない。会社の信用と未来を守る、経営そのものの問題だ」と痛感しました。
「売上を上げよう!」「利益を出そう!」「前年対比数字と目標予算を必ず達成しよう」という企業風土が間違いなのではありません。
これは営利企業としては、当然のことであり、私自身も日々、皆さんに常に言っています。
利益がなければ、税金によって社会貢献できませんし、新しい事業や設備、人財へ投資することも、従業員の給料を上げることもできません。
会社が成長しなければ、そのご家族の将来に対して、より大きな安心や夢を提供することもできません。
だから私は、目標を高く掲げること自体が悪いとは全く思っていません。
むしろ経営者は、従業員に夢と高い目標を示して、その実現に向かって先頭を走らなければならないと思っています。
ここで一番問題なのが、気が付けば、「目標を達成することが、正しいことよりも優先されてしまうこと」です。
「何としても数字を作ろう」という前向きな言葉が、いつしか「数字さえ作ればいい」に変わる。
「新しい何かに挑戦しよう」が、いつしか「できないとは言わせない」という風土に変わってしまうのが怖い現象です。
もし、そんな空気が会社に生まれているとすれば、それは社員さんだけの責任ではありません。
その空気をつくってしまった経営者にも大きな責任がある。
まずは、ここを私自身もしっかりと強く自戒したいと思います。
シューワGがまだ小さかった時代は、「俺についてこい!」「まずやってみよう!」というトップダウンでも会社は動きました。
むしろ、その昭和的な強烈なリーダーシップが成長の原動力になった時期もありました。
しかし、会社が大きくなり、事業も従業員も増えた今、社長一人ですべての現場を見て、すべてにおいて正しい判断をすることなど不可能です。
ここに、私が考えるコーポレートガバナンスの本当の意味があります。
以前の私は、ガバナンスとは「面倒なルール」「会社のスピードを遅くするもの」という印象を持っていました。
しかし今は、会社が大きくなるほど必要になる「成長するための安全装置」だと考えています。
社長も人間であり、時に判断を間違えることもあれば、一時的に感情的になることもあります。
特に怖いのは、過去の成功体験が「今回も自分が正しい」という思い込みに変わることです。
だから、経営チームや取締役会がある。
そして、制度以上に大切なのが、従業員が「それはおかしい」と言える企業風土です。
本当に速く走る車ほど、強力なブレーキを持っていて、「確実に止まれる」という安心があるからこそ、思い切ってアクセルを踏める。
ガバナンスは会社を縛るためではなくて、むしろ「攻めるためのガバナンス」だと考えています。
しかし、会社を止めるのは自然災害だけではありません。
不正会計、コンプライアンス違反、情報漏洩、重大事故、そして経営トップの判断ミスも、会社の存続を脅かします。
車や設備は買い直せますし、建物は建て直せます。
しかしながら、一度失った「信用」は、お金を支払って簡単には買い戻すことはできません。
だからこそ、「コーポレートガバナンス」が重要だと考えています。
会社の信用を守り、事業を継続させ、従業員とその家族の生活を守る。
災害への備えだけではなく、どのような状況になっても会社そのものを止めない仕組みをつくることが、本当のBCPではないでしょうか?
そのためには、「法令順守とコーポレートガバナンス」における「数字」と「正しさ」の順番を間違えてはいけません。
売上も利益も会社が存続するためには絶対に必要ですが、数字を達成するためなら何をしてもいいという考え方になれば、その数字が逆に会社を壊すことになります。
失敗を早く報告した人が怒られ、問題を隠して数字だけを合わせた人が評価されるような組織になれば、やがて誰も悪い情報を上げなくなります。
小さな問題を隠すことが、結果として会社の信用を失う大きな問題につながっていくのです。
だから大切なのは、「何を達成したか」だけではなく、「どのように達成したか」まで問うことであり、
正しい方法で売上をつくり、正しい方法で利益を残すことこそ、長く続く会社の経営だと思っています。
その判断基準として、私は旧盛和塾・稲盛和夫塾長の「動機善なりや、私心なかりしか」の言葉に立ち返ります。
その判断の動機は本当に善なのか、そこに自分だけの都合や私心はないのか?
これは従業員に問う前に、まず経営者である私自身が問い続けなければならない言葉です。
自分にとって都合の良い情報だけを聞くようになった時、経営者として最も危険な状態に入っているのだと思います。
私は、「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉こそ、究極のコーポレートガバナンスだと思っています。
どれだけ立派な制度や規程をつくっても、最後に判断し、行動するのは「人」だからです。
だからこそ、フィロソフィという「心」と、ガバナンスという「仕組み」の両方が必要になります。
正しい心を持つだけでも足りない、仕組みをつくるだけでも足りない、この二つがそろって初めて強い会社になるのだと思います。
そして、その先にあるのが、私たちの目指す「100年ユーティリティ企業」です。
100年企業を本気でつくるのであれば、私一人の判断だけで動く会社ではいけません。
私が社長でいる期間よりも、私がいなくなってからのシューワの歴史の方が、はるかに長くなければ100年企業にはならないからです。
社長が変わり、時の政府の経営陣も変わり、事業環境が大きく変化しても、シューワGは続いていかなければならない。
そして、大きな災害や危機が起きた時にも、地域社会から「シューワがあって良かった」と言っていただける会社であり続けたいと思っています。
そのために必要なのは、何でも正しく判断できる「強い社長」ではありません。
そんな経営者は存在しないからこそ必要なのは、「社長が間違った時にも、正しい方向へ戻れる強い組織」です。
従業員には、「社長、それは違います」と言える勇気を持ってほしい。
そして社長である私には、その言葉を素直に聞き、自分の判断を変えることのできる勇気が必要です。
立場が上がれば上がるほど、耳の痛い話は聞きたくなくなるものです。
しかし、経営者にとって本当に価値のある情報とは、気持ちの良い報告ではなく、時には聞きたくない現実の中にあるのではないでしょうか。
私たちが目指しているのは、「ありがとう」の言葉を世界一集める企業です。
それはお客様だけではなく、従業員、取引先、地域社会、そして未来の世代からも「ありがとう」と言っていただける会社をつくることです。
そして100年先の従業員から、「シューワという会社を残してくれて、ありがとう」
そう言ってもらえる会社を残すことが、今を預かる私たちの責任だと思っています。
そのためにも、まず社長である私自身が、「自分は間違っていないか」「従業員は本音を言えているか」
「その判断は本当に人として正しいのか」と、常に自分に矢印を向け続けなければなりません。
売上や利益だけを追うのではなく、「正しいことを正しくやり続ける強さ」を持った会社へ。
その判断に迷った時には、いつでも原点に戻る。
「動機善なりや、私心なかりしか」
この言葉を経営の原点に置き、まず私自身が襟を正す!!
そして謙虚にして驕らず、そしていつもど真剣に皆さんと共に100年企業へ一歩ずつ進んでいきたいと思います。
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